全身ずぶ濡れの男が、目の前で豪快なくしゃみをした。
「汚い。手で口を押さえてください。唾液が飛ぶでしょ」
迷わず小野玲音(おのれおん)は除菌スプレーを男に振りかけた。
「やめろ、って。普通この状態の相手に対しては、寒いんですか? とか、温かい飲み物をどうぞ、とかじゃないのか」
「変質者のストーカー相手にですか? 変な期待をするのは止めて下さい」
「期待はするだろ。部屋に連れ込んでバスタオルまで貸してくれたんだ」
日中に活動をしていない玲音の色は白い。
元々が色白というわけではないので虚弱にはみえない。
だが一般の同年代の男に比べたらかなり白い方だ。
その白い肌を一気に上気させ、玲音は男を睨んだ。
「あなたが勝手に入ったんだ。そして、勝手にバスタオルを漁った」
玲音の言っていることは正しい。
男は、自分本位な誤解の結果、勝手にずぶ濡れになった。
そして濡れた責任を取れと玲音の細い腕をとると、玲音が住んでいる年代物のマンションへと、まるで自分の自宅へ戻るかのこどく足取りで向かった。
最初は男の家に連行されるのかと思っていた。
風景がいつも通っている見慣れたものばかりになり、偶然同じ地区に住んでいるのかと思えば、男の足が止まったのは玲音の住んでいるマンション前だった。
どうして初対面の男が玲音の部屋を知っていたのか不思議だ。
だが、それだけじゃない。
この男はこの部屋の鍵まで持っていた。
玲音にしてみれば、知らない男に因縁をつけられ部屋に転がりこまれたに過ぎない。
しかもその変質者は玲音の住所を知り、部屋の合い鍵を持っているという立派なストーカーだった。
「追い返さなかったんだ。同じ事だ。俺が押し掛け強盗だったら今頃命はないぞ」
「命があることに礼を言えとでも?」
「言ってくれるなら、受けるぞ」
「ありがとうございます。これで気が済みましたか?」
「ハハハ。面白いヤツだ。普通、ここで礼は言わないだろ。悪いが俺の気は済んでない、小野玲音君」
やはりストーカーだ。
この部屋に表札は出ていないし、玲音も自らを名乗っていない。
「分かりました。じゃあ、警察を呼びます」
「それは無理だろう」
男は自分の水分を拭いてたバスタオルを玲音の首に掛けた。
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